「無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法」というベストセラーを何ヶ月か前に読んだ。学生時代に会計士の資格を取り、外資系を渡り歩きながら、子育てと仕事を両立して、新卒の頃から年収を10倍にしたという超人的な著者の時間活用術を書いている。

興味深いのは、時間の使い方を完全に「投資」に振り向けるべきという考え方。例えば、家で大して見たくもないようなテレビ番組を見てダラダラと過ごす時間は「空費」の時間で、何かしらの勉強であったりと時間を「投資」に割り振るようにしていくべきという。この考え方はその通りだと思うし、確かにここまでできれば年収も上がる。特にかなり若いうちから意識していると、10年も経てば、かなり差がつくはず。

時間の過ごし方というと、会社で過ごす時間が社会人になれば最も長くなる。この最長の時間を、どの会社に入るかを「投資」という視点で考えてみることもできる。

例えばテレビ局新聞社といったマスコミ。大手であれば、新卒が圧倒的に多く、転職組は少数で社員の入れ替わりはかなり少ない。会社を通して得られる技術は、取材の仕方であったり、テレビ番組の制作手法であったりと、他の業界では全く使い道のないスキルだ。また、新卒で入社して会社内の権力構造なども理解するようになるが、これもその企業だけで通用する特殊なものなので、他で役に立つというものでもない。番組制作や記者以外の職種、例えば営業のような職種でもマスコミの営業は、他の業界の営業と比べても、得られる能力に強みはない。

業界内での人材流動性もほとんどないから、時間の使い方を、いわばその業界、もっと言えば、その会社でしか通用しない技術にほとんど費やしているという「投資」だ。マスコミ以外だと、官公庁もこの範疇に当てはまる。

ただ、給与水準はきわめて高く、リストラもない。人事制度は他の業界と比べれば、かなりの年功序列で、会社の基盤自体も安定している。「投資」で言えば、かなり利率の良い定期預金とか国債のようなものだろうか。確実に安定した利益は出るけれど、途中解約の自由はないし、一度購入してしまえば、もはや自分でどうにかする余地は少ないが、危険性もない。

ちなみに「企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続」という最近読んだ経営の本によると、海外では、こうした企業特殊な時間への「投資」を強いると、相当のメリットを用意しない限り、エンジニアなどの従業員は明らかな拒否反応を見せるらしい。

一方、「定期預金」型の会社と正反対なのが外資系や金融、厳しい営業が中心の業界だろう。金融や経営、営業の技術というのは、どの業界でも必要とされる。だから、転職もかなり幅広い。何社も渡り歩くのが当たり前。自分の意思で会社を辞めることもできるし、代わりの仕事を見つけるのも比較的容易。実力重視で、すべては自己責任の世界だ。外資や成果主義の営業の会社では、数千万円の年収も珍しくはない。ただ、力がなければ、安定が保証されている世界ではないので、収入も雇用も不安定、活躍する同僚と比べてしまい、精神的にも辛いだろう。

自由と大きな可能性を得る代わりに、リスクも引き受ける。時間の「投資」で言えば、株を買っているようなものだろうか。実力と判断力が必要で、何を買うのも、いつ売るのも自分次第。定期預金ではありえないほどの飛躍的な儲けもあるし、反対にゼロにもなりうる。

どういう時間の使い方が自分の性に合っているのか。就職を時間への投資という観点で考えてみるのも、たまには面白い。



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2008.03.25 Tue l 就職活動を考える l COM(0) TB(0) l top ▲

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