官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)
(2007/04)
魚住 昭

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取材と言っても、具体的にどんなことをしているのか、イメージできる人は少ないと思う。せいぜい記者会見に出ていることくらいだろうか。

元共同通信の記者である著者が、取材の実情と問題点を包み隠さず記している。取材と言っても、現状では圧倒的に大部分、かつ重要なのが政治家、警察官、検察官といった権力、特に官僚に話を聞くということだ。よって、マスコミと官僚は極めて危うい関係に陥りがちだ。

本書では、権力への監視を標榜しながら、実際には官僚らに操られているマスコミの構図をいくつも示している。例えば、北朝鮮支局開設といった社業への権力側からの悪影響を懸念しての報道の自主規制。マンションの耐震構造偽装事件での国交省が自らの過失に目を背けさせるための世論操作。ライブドア事件など、検察が社会的に注目される事件を次々と「つくる」ために、ますます記者は検察から情報をもらわなくてはならず、批判できないというジレンマ。さらに電通による広告収入を餌にした裁判員制度に対する記事の操作など。介入は高圧的にではなく、したたかに、静かに動く。

公正中立をうたいながら報道が権力から歪められているという実態は、著者自身がかつて共同通信で検察を取材していただけに説得力を持つ。

今ではライブドア事件にしろ、耐震構造偽装問題にせよ、事の本質を読み取るためには専門的な知識が欠かせない事件が多発している。だからこそ、記者は専門家である官僚に対抗しうるだけの取材と勉強をしなくてはならないはずだが、お粗末な記者が大多数という現実が官僚のご意見を垂れ流している。事件が複雑化する現代では、官僚情報垂れ流しの危険はますます大きくなっている。

著者は本のなかでマスコミを歪める原因を官僚側であったり、社内の行き過ぎた成果主義や管理体制に求めている。だが、それに加えて、マスコミで働く者自体の精神性にも問題があると思う。

新聞社やテレビ局はいまや銀行を超える給与水準の優良企業だ。幼い頃から優等生だった者が何の疑いもなく、受験勉強に励み、有名大学に合格し、高所得に魅かれて優良企業であるマスコミに入って出世を目指す。既成の秩序に最も適合した人々の集団にマスコミが成り下がったとすれば、もはやジャーナリズムの批判精神を期待する方が無理ではないか。




2008.01.03 Thu l マスコミ就職の必読本 l COM(0) TB(0) l top ▲

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