自己PR: 観客を巻き込むライブでNo.1エンターテイナーに
 「つまらんわ」。自分は昔から三度の飯より人を楽しませるのが好きで、現在軽音サークルでハードロックバンドのボーカルとしてライブ活動をしているが、バンドを組んで間もない頃ライブ後に先輩に指摘された。曲や演奏自体は良いのに観客のことを意識していないからライブで盛り上がりにくいらしい。それがきっかけで激しいライブパフォーマンス、曲中でのかけあい、アンケートで感想を聞くなど「観客と一緒にライブを盛り上げる」意識を持って、ライブをした。その甲斐あってか今では111人いるサークルの中で一番のエンターテイナーと言ってもらえるようになった。自分は生涯エンターテイナーでありたい。将来は日本人1億3000万人を楽しませることができる仕事をするつもりだ。

志望動機
 バンドの経験から得たのは「面白いことは見るより参加するほうが楽しい」ということである。現在テレビの世界は人々にとって遠い存在なので、もっと視聴者が番組に参加していると意識できる身近な番組を作ればより楽しんでもらえるはずだ。自分はそんなバラエティ番組を作りたい。


右のメールフォームから、エントリーシート添削希望の方を募集したところ、さっそくエントリーシートを送ってもらいました。初回ですので、丁寧すぎるほど、細かい指摘かもしれません(笑)。

僕の意見までにスペースを空けてみますので、読んでいる方は少しだけ、自分でどう感じたか頭のなかでまとめてみてください。この方の自己PR志望動機を読んでどう思ったか。どうしたら、もっと力を持つようになるか。





さて、ここからが僕の感想です。

まず、自己PR。キャッチコピーをつけて分かりやすくしているということ。入り方を「」の言葉にするのは上手いと思います。天声人語といった新聞のコラムでもよく使っていますが、出だしを台詞ではいるというのは、読み手をひきつけるための手堅い方法です。

内容ですが、この方はバンドでボーカルをしていたという分かりやすいセールスポイントがあります。しかも、漠然と取り組んでいたのではなく、目的意識を持ち、改善に努め、結果を出した。具体的な体験を持っているというのは、大きな武器です。普通の志望者はこの体験自体がなくて、書くことがないと苦労しています。だからこそ、自分ならではの、自分しかできなかった体験としてもっともっと強調したらいいと思います。

具体的には「つまらんわ」と言われてから、工夫した改善策をもっと具体的に肉付けすべきでしょう。曲中でのかけ合い、アンケートだけでは、バンドをやったことがない人でも書けてしまいますし、無難な感じがしてしまいます。

アンケートであれば、具体的にどういう指摘があって、気がついたのか。かけあいではこれまでと違って、何を心がけるようにしたのか。あるいは、自分の大好きなアーティストのライブを徹底的に研究するなどして学んだのか。実際に体験した人にしか書けない、生き生きとした具体的な内容がきっとあるはずです。自分しか書けない、自分ならではの体験を重点的に書くようにすると、さらに強い自己PRになります。

字数制限でひっかかるなら、一般的な改善策を3つ挙げるより、独自の経験で肉付けした、面接官に最も訴える改善策ひとつに絞ってもいいかもしれません。

あと、細かいですが「一番のエンターテイナーと言ってもらえるようになった」ということであれば、「言ってもらえた」だけではなく、さらに具体的な事実があれば示したいところです。例えばサークル史上最も観客を集めたバンドになった、などです。自分を語る言葉はできるだけ形容詞や抽象的な言葉ではなく、体験に基づく内容だと説得力とアピール力が違ってきます。

次に志望動機です。まず細かい文面ですが、志望動機のなかで「テレビの世界は人々にとって遠い存在」と指摘しています。その会社や業界に否定的なことは書いてはいけないということは決してないのですが、書くからには相当、自分なりの裏づけが必要です。それも借り物の一般論ではなく、自分ならではの感想です。間違っても新聞や週刊誌で見聞きしたような意見では厳しい。

というのも、面接官はその業界で10年は生きている人です。学生が感じているような課題には10年間毎日向き合って考えているような人たちです。中途半端な、新聞の社説のような指摘だと、「大きなお世話。それくらい考えているよ」と思われかねません。

とはいえ、この方の志望動機をちゃんと読むとテレビの否定というより、もっと面白くなるという提案だということがわかります。ですので、誤解を受けないように「テレビの世界は人々にとって遠い存在」と書くより、「参加したくても参加できない」とか、「本当の視聴者参加で今の2倍面白くなる」といったように、もっと良い言い方があると思います。

志望動機の内容自体ですが、志望動機でも自己PRと同じ指摘になります。つまり、独自の体験での肉付けです。骨子はわかりますし、まとまってもいるのですが、志望動機の骨子を自分ならではの体験で肉付けすべきです。

「面白いことは見るより参加するほうが楽しい」というのであれば、バンド活動のなかで参加することの何が楽しかったのか。工夫することなのか、観客の笑顔なのか、自分が感じた参加することの楽しさをもう少しだけ強調してみてはどうでしょう。

さらに視聴者参加番組を作りたいとありますが、視聴者参加番組自体は珍しくはありません。今でもテレビでは「ケータイでの投票」といった呼びかけで毎日のように放送しています。かといって、前例がない画期的な企画のコンセプトを書きましょうなどと言うのは簡単ですが、現実にはきわめて難しい。そもそもプロが作っているはずのテレビ番組ですら、そんな画期的な番組にはほとんどお目にかかれないわけですから。

ですので、視聴者参加番組を目指すというのであれば、目指す理由を自己PRで書いたバンドの体験で肉付けしたいところです。ライブというのはテレビ番組とは比べ物にならない双方向性なのですから、観客が参加できるようになると、いかに喜んでもらえるのか。どんな可能性が広がるのか。あるいは、作り手自身にどのような変化をもたらすのか。バンドをやっていた人にしか書けない体験があるはずです。

やりたい企画の骨子を書くのであれば、できるだけ自分という人間の存在と結びついているような、企画と自分自身がへその緒で結びついているような企画だと、この人は本当にやりたいんだなと説得力が出てきます。

バンド経験という自己PR、そして、バンドで得た感動の経験が志望動機そのものになり、さらに入社したら実現したい企画に結びつくという一本の線ができるとさらに強くなります。

お送りいただいたエントリーシートは良くまとまっているので、書類選考であれば普通に行けば、通るレベルだと思います。ただ、この方は難関のキー局を志望されているようですので、あえて厳しい眼で指摘させてもらいました。




2008.01.28 Mon l エントリーシートの添削 l COM(0) TB(0) l top ▲